万能性と攻撃力、欧州で輝きを放ち始めた鄭智 |
中国代表が東アジアサッカー選手権2008決勝大会において韓国、日本を相手に連敗を喫した際、多くの中国サッカーファンはチャールトン・アスレティック(イングランド2部)に所属し中国代表キャプテンであるMF鄭智(ZHENG Zhi)を思い起こしていた。鄭智は旧暦の大晦日(2月6日)に行われた2010年ワールドカップ南アフリカ大会アジア3次予選のイラク戦では、後半にゴールを決め、1-1と試合をドローに持ち込んだものの、試合後は所属チームのリーグ戦のため代表を離れていた。
鄭智は2006-2007年シーズン、半年間のレンタル移籍でプレーしたチャールトンでイングランドのサッカーに適応し、2007年夏に完全移籍すると、一気にチームに欠かせない主力選手となった。英国FAカップの試合では、チームキャプテンを務めた。また、在英中国人の代表として、中国訪問を控えるゴードン・ブラウン(Gordon BROWN)英首相に謁見した。首相を前にして緊張の面持ちを見せ、英語もあまり流暢でなかったが、これは彼のチームでのプレーとは全く関係がない。
1月のイングランド2部リーグ月間MVPに、鄭智の名前が載ることはなかったものの、最終候補の4人まで残った。1月のチャールトンでの活躍が大いに評価されたことを示している。2月16日にホームで行われたワトフォードFC(イングランド2部)戦では、ファン投票によるマッチMVPに選ばれた。2月には、イングランド2部リーグ公式選手ポイントにおいて、鄭智は472ポイントで5位にランクイン。MF部門では、ストーク・シティFCのリアム・ローレンス(Liam LAWRENCE)、カーディフ・シティFCのポール・パリー(Paul PARRY)に次ぐ3位に位置し、チーム内での最高順位をキープしている。英国著名サッカー雑誌『Four Four Two』は、イングランド1部リーグ所属選手を除いて、イングランドで最も優れた選手50名のひとりに、鄭智の名を挙げている。
4-1で完勝した1月12日のブラックプールFC戦で2得点を記録した鄭智について、チャールトンのアラン・パーデュー(Alan PARDEW)監督は、試合後の記者会見で、「冬の移籍時期の今、残留交渉が難しくなるので、これ以上彼にゴールを決めてほしくない」と冗談気味に語った。その後、鄭智は監督の「命令」を聞き入れたのか、ゴールをあまり決めていないが、2007-2008年シーズン、既に9得点(2月29日時点、リーグ戦7得点、カップ戦2得点)を決めており、依然としてゴール数でチーム3位につけるアタッカーである。2007-2008年シーズンの試合出場数(35試合=リーグ戦32試合、カップ戦3試合、2月29日時点)を見ても、GK・ニッキー・ウィーバー(Nicky WEAVER)に次ぐ2番目の数字だ。2月に入ってからの最初の10日間で代表戦とクラブの試合併せて4試合戦うという稼動過多を危惧する声も聞かれたが、現段階ではあまり影響はないと見られる。
チャールトンのパーデュー監督は鄭智の特徴について「彼は冷静で、試合の流れを見極めるのがとても上手い。適応性が高くて、攻撃と守備のバランスが優れており、彼は複数のポジションで主力を務めることができる」と口にする。また「特に彼の攻撃力は際立っている」と高評価の攻撃力を備える鄭智は、チャールトンでもエースFWになれると期待されている。実際、過去に中国国内クラブ及び中国代表においてFWを任されたことがあり、CSL(中国サッカー協会スーパーリーグ、日本のJ1に相当)では、2006年シーズンに30試合21得点で得点ランキング2位を獲得した経験を持っている。この点からみて、鄭智はGK以外のあらゆるポジションをこなす「ルート・フリット(Ruud GULLIT)型」のユーティリティ・プレイヤーだと見て取れる。しかし、私心がなくチーム貢献の精神を持つことこそがチャールトンに気に入られている最大の理由だ。鄭智は過去にチャールトン・アスレティック公式サイトの取材を受けた際、「ゴールを決めるのは本当に楽しい。しかし、自分にとって最も重要なことは、MFとしてチームをコントロールすること。正直に言うと得点争いにあまり関心はない。FWに点を取らせたい。そして、チーム全体として機能させたい。自分はディフェンスラインと前線をつなぐ選手になりたい」と語っていた。
前キャプテンのアンディ・リード(Andy REED)がチームを離れてからは、33歳のアイルランド人MFマット・ホランド(Matt HOLLAND)がキャプテンを引き継いだ。リードは、自身のアシストにこだわりを持っていたが、新キャプテンのホランドは、チャンスになると、よりアシストを得意とする鄭智にボールを託し、自身は後方に残りチームのディフェンスラインを守る。自身と肩を並べ一年間一緒に戦ってきた鄭智に対しこう語っている。「鄭智はまるで永遠に動き続けるエンジンのようだ。彼は現在チームNo.1のアタッカー。MFでこんなにゴールを決められるし、他のポジションだってできる。われわれは去年、攻撃能力に気づいていた。9得点を決めたことは、全然意外なことではない」
リバプールFC(イングランド1部=プレミアリーグ)のMFスティーブン・ジェラード(Steven GERRARD)は、イングランド代表の新監督ファビオ・カペッロ(Fabio CAPELLO)が就任後の初代キャプテンである。ホランドは鄭智をチャールトンと中国代表のジェラードだとし、こう語っている。「われわれはチームワークのあるチーム。中でも鄭智は、オールラウンドプレイヤーでアシスト能力に長けているが、ディフェンスも決して疎かにしない」。また、そのスター性から「中国のデイビッド・ベッカム(David BECKHAM)」と例える人もいる。これらの意見に対し、当の本人は、「それは無い。自分はスーパー・スターではない」と明言。謙虚な姿勢を貫いている。
鄭智の今季の目標ははっきりとしている。「ぜひチャールトンを助けてプレミアリーグに帰りたい」。チームはイングランド2部で首位・ストーク・シティと勝ち点差10の6位(2月29日現在)。チャールトンにおいて契約金(200万ポンド=約4億8000万円)が最も高い選手である鄭智は自分が先頭に立ってプレーしなければならないという自覚を持って試合に臨んでいる。だからこそチャールトンに勝利をもたらすことが使命だと考えているのだ。攻撃力抜群の「中国代表の万能型MF」が、シーズン終盤戦でさらなる活躍を見せ、1946-47年シーズンにはFAカップを獲得したこともある古豪クラブをイングランド最高峰リーグ昇格へと導く。
<プロフィール>
MF鄭智(ZHENG Zhi)
1980年8月20日、中国遼寧省出身。2001年に深圳平安科健(現深圳上清飲)に加入。2002年には中国CSLのMVPを獲得した。05年、山東魯能へ移籍。06年には21得点を挙げてリーグ優勝に貢献した。07年1月にはイングランド1部のチャールトンへ期限付き移籍。同年3月のニューカッスル戦ではリーグ戦初先発で初ゴールをマークした。そして07年8月に同クラブへ完全移籍。中国代表では現在、エースナンバーの10番を背負う。181センチ、72キロ。
胡江波(HU Jiangbo)=文