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EA EUROPEAN BASED PLAYERS REPORT

December, 2007 No.002

韓国の英雄 イ・チョンス、オランダでの欧州再挑戦

オランダの名門・フェイエノールトで新たなスタートを切ったイ・チョンス

 開幕前にウイングのMFロイストン・ドレンテ(現レアル・マドリー)、MFロメオ・カステレン(現ハンブルガーSV)が抜けたフェイエノールトは、サイドアタッカーの補強が急務だった。そこでフェイエノールトが獲得に乗り出したのは韓国代表のFWイ・チョンスだった。
 フェイエノールトは長いこと獲得候補選手としてイ・チョンスのチェックを続けていた。フェイエノールトはさらに、韓国代表監督を務めた経歴のあるオランダ人・ディック・アドフォカート(現ゼニト・サンクトペテルブルグ監督、ロシアリーグ)とビム・フェルベークの両氏にも意見を求めた。
 「サッカーだけでなく、人となりの面でも2人はイ・チョンスを高く評価していた」とテクニカル・マネージャーを務めるペーター・ボス。
 フェイエノールトでのイ・チョンスにはサイドアタッカーとして活躍することが期待されているが、選手層が薄いチーム事情もあり、
 「左右からのサイドアタック同様、彼はトップ下でもプレー出来る」
と語るボスTMの言葉から、攻撃的MFとして試合に出場する機会もありそうだ。


 イ・チョンスのデビュー戦は10月20日のロッテルダム・ダービー、対エクセルシオール戦だった。試合は0-0のまま進み、フェイエノールトは大苦戦。このこう着状態を打開するため、ファン・マルワイク監督は後半16分にイ・チョンスを投入した。
 「イ・チョンスのコンディションを考え、残り15分で使おうと思ったが、試合展開からみて、サイドからダイナミックに、敵陣深く切れ込めるイ・チョンスのような選手が必要になった」
 その狙いは当たった。イ・チョンスがボールを持つごとにファンは「リー、リー、リー!」と叫んで、果敢なプレーを後押しした。フェイエノールトはイ・チョンスの投入によって攻撃のリズムをつかみ、1-0で勝利した。

 初先発は11月11日。舞台は『デ・クラシケル』と呼ばれる伝統の一戦、フェイエノールト対アヤックスだった。この時、2位フェイエノールトは首位アヤックスと同じ勝ち点。両者の順位を分けたのは、わずか得失点差だけだった。
 前節のデ・フラーフスハップ戦で後半からプレーしたイ・チョンスの怖いもの知らずな態度とプレーに、ファン・マルワイク監督は魅了されていた。
 「彼のプレーにはふてぶてしさがある。ボールを受けると10回のうち7回は相手のDFに仕掛けていこうとする」
 こうしてイ・チョンスは、オランダ中、いや世界のサッカーファンも注目したデ・クラシケルで“秘密兵器”として大抜擢されたのだった。
 フェイエノールトは右サイドに張るイ・チョンスに沢山のパスを集めた。トラップ技術の高さ、クロスの正確さは地元ファンも評価した。しかし70分間のプレーでシュートは2本。スルーパスで決定機を作ったが、ゴールに絡むことなくベンチへ下がった。

 試合は2-2で引き分けた。試合終了後、イ・チョンスは、
 「勝てる試合を引き分けて残念」
と結果を悔やんだ。しかし、
 「自分としては出場時間が増えているので嬉しい。このようなビッグゲームに私を先発させてくれた監督に感謝したい。もっと出場時間を増やし、ファンの期待にもっと応えたい」
と順調に伸びていく出場時間に手応えを感じていた。さらにイ・チョンスは、ビッグリーグへの再挑戦を語り始めた。
 「どこのチームかわからないが、将来はもっと大きな舞台に進出したいという夢がある。そのためにもフェイエノールトで最善をつくしたい」
 アヤックス戦まで、イ・チョンスの欧州再挑戦は順調に進んでいた。しかしその後、イ・チョンスは酷い頭痛を訴え、フローニンゲン戦を欠場した。フェイエノールトはその症状をより精神的な病、つまりホームシックと判断し、イ・チョンスとの話し合いの上、2週間の韓国休暇を認めた。
 イ・チョンスは2004年から2シーズン、スペインリーグのレアル・ソシエダ、ヌマンシアに所属したが、出場は28試合に留まり、ゴールをひとつも記録することが出来なかった。9月に行われた入団記者会見で、イ・チョンスはスペインでの失敗をこう振り返っている。

2007年11月11日、アヤックス戦。伝統の一戦『デ・クラシケル』でイ・チョンスも気合のこもったプレーを見せる

 「あの時、私はまだ若く精神的に未熟でした。サッカー選手としても、人間としても、私は経験不足だった。それがスペインで成功できなかった最も大きな理由。自分は一人ぼっちで孤独を感じていた」
 フェイエノールトもイ・チョンスのスペインでの失敗をよく知っている。だからこそ念入りに身辺調査を行った上で「今のイ・チョンスなら大丈夫」と判断し獲得。さらに入団後も、オランダの韓国人社会との橋渡しをするなど、イ・チョンスがオランダでの生活に馴染めるよう協力していた。だからこそ「アヤックス戦までは全て完璧だった。我々は今の状況にとても驚いている」(ボスTM)とイ・チョンスの緊急帰国が与えた衝撃はフェイエノールト内のみならず、母国・韓国でも大きい。韓国メディアは「イ・チョンスは早くもKリーグ復帰を模索している」など、センセーショナルに報じている。
 しかしイ・チョンスは片道航空券で韓国へ帰ったわけではない。チームはオランダへの帰国便も抑えている。
 「スペインでの失敗から私も歳を重ね、色々なことを覚えた。今はどうしたら成功できるかわかっている」
とイ・チョンスはフェイエノールトでの記者会見で語っていた。その答えをもう一度、チームと約束した2週間の休暇中に探し、イ・チョンスは再びオランダに戻ってくるだろう。

 <プロフィール>

FWイ・チョンス(LEE Chun Soo)1981年7月9日、韓国出身。2002年に高麗大からKリーグの蔚山現代へ入団。2003年にスペイン移籍を果たし、同国1部リーグのレアル・ソシエダ、ヌマンシアでプレーした。その後、2005年に蔚山現代へ復帰しチームの9年ぶりの優勝に貢献。2007年10月にフェイエノールト(オランダ)へ移籍した。韓国代表には2000年にデビュー。2002年W杯日韓大会、2006年W杯ドイツ大会に出場。同代表通算78試合出場10得点(2007年11月現在)。174センチ、66キロ。

中田徹=文